あの日のこと
その3年前、福島へ転勤することが分かった日に、父に病気があることを知らされた。
それよりも前、70歳を迎える正月、らしくもなく私たちを集め、これからは世話になることもあると思う、と言った。
11日。
入院の知らせを聞いて病院に行ったものの父とはまだ普通に話が出来た。
なんとなく医師の微妙にオブラートに包んだ「2,3日でどうなるか決まります」という説明が実感を伴って飲み込めなかった。
12日。
相変わらず酸素マスクをつけたままだったが、まだ普通に話が出来た。
忙しいのに心配かけて悪かったな、と笑っていた。
13日。
前日深夜に着いた弟がお見舞いに行くというので、私はいったん仕事に向かった。
しかし、ほどなく弟から電話が入った。夫にも連絡。
前日、「パンと牛乳なら食べられそうな気がする」と言っていた父は、話すことがかなり聞きづらい状態になっていた。
たった十数時間でこんなに変わってしまうなんて。
それでも父は、「心配することはない。大丈夫だ。」と繰り返した。最後まで。
父はそのまま亡くなった。
私には「世話」は1回もさせなかった。
あまりにもいつものようだったので、今も父は実家にいて相変わらずマイペースにしてときどき母を困らせているんじゃないか、と、1年たった今でも思う。
('10.3.15 wrote;)
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